自由になれなかった人がいた。究極の課題へ取り組んだtenbo

巷あふれるファッションアイテムひとつ見たときに、商業的な側面から、大多数の人が着ることができるありふれた衣類が展開されることが多い。サイズ、素材、カラーリング、何の疑念もなくわたしたちは選び、そのほとんどの服を着ることができる。大多数ではない”少数”の人に向けた服を作ることはチャレンジングなだけでなく、ライトにいえば「だれもがかっこよくなれるファッション」は究極的ともいえる。

tenboのコレクションを初めて見たときにひとはどう感じるだろう。

tenboは他のファッションブランドとは一線を画している。伝達すべきテーマが先にあり究極的な課題に取り組んできた。衣服はそれを表現をするあくまでひとつの道具である。ファッションをひとつの武器として、テーマと向き合ってきたデザイナーとスタッフ、モデルによって作り上げた神聖な空間をいつも並々ならない思いで見てしまう。

今回、ハンセン病を課題として取り上げられた。映像と共に過去の歴史から現代もなお続く偏見や差別のプレゼンテーション。ハンセン病は感染力が非常に低いにもかかわらずまだ病気の理解が乏しい時代、その外見や感染への恐怖心から感染者は隔離され、結婚や出産まで一生自由な生き方を制限された。わたしたちはそうした情報すらも目背けてきた事実がある。そしていまだに隔離施設があり、居住する人々がいる。

複雑かつ深刻、目を避けたくなる事実がそこにあり、真っ向からぶつかり多くの予算を使い発信を行うのは尋常なことではないことだが、それだけの覚悟を持って現実に次世代の人たちのために発信を続ける必要性が伴っていることが理解できる。

ウィーク中、デザイナー鶴田氏との立ち話で「今回のコレクションに参加してくれた若いデザイナーは少なからず創作活動に役立ててくれることを期待している」と冷静な眼差しで話をしてくれた。

デザイナーのそのような姿勢から展開されるコレクションは、2016年のランウェイもそうだったが、不思議なことに見て重い雰囲気にはならない。繊細な素材と淡いカラー使い。メッセージは衣服にプリントされることで柔らかな発信媒体となって、絶妙なバランス感で伝達されていくよう。ランウェイを歩くモデルからこぼれる笑顔からは誇りが滲みでており、むしろ羨望を感じる。最後には元ハンセン病患者のモデルが登場、観客の感動を誘った。

 

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Taeko Mitamura
Taeko Mitamura

インポートアイテムを使ったシックでエレガントな着こなしの提案を得意とするスタイリスト兼アパレル会社オーナー。PRプランナーの肩書きを持ち、2014年7月に独立しアパレル&PR会社「UNCLACK株式会社」を創設。大学在学中にWeb・ECの仕事を始め、IT創成期にはEC事業を手がけるMakeShopのスタートアップメンバーとして参画した。

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